― 多くのマンションで起きている「理事長の燃え尽き問題」 ―
マンション管理組合の理事長という役職は、多くの人にとって「思っていたより大変だった」と感じる役割です。
実際、私がマンション管理士として多くの管理組合の相談を受ける中で、よく耳にする言葉があります。
「理事長をやってみて、ここまで大変だとは思わなかった」
「1年が終わる頃には本当に疲れ切ってしまった」
なぜ、多くの理事長は1年で疲弊してしまうのでしょうか。
今回は、マンション管理の現場でよく見られる「理事長が疲れてしまう理由」について解説します。
理事長は想像以上に責任が重い
まず理解しておきたいのは、理事長は単なる役員ではないということです。
管理組合の代表者として、
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総会の議長
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理事会の統括
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管理会社との窓口
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契約書の代表者
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住民からの相談窓口
といった役割を担うことになります。
つまり、マンションという「小さな社会」のリーダーを務める立場です。
理事長は会社で言えば「社長」のような存在です。
しかし、多くの場合専門知識もなく、本業も別にある区分所有者がボランティアでその役割を担っています。
この時点で、すでに負担が大きいことが分かるでしょう。
理由① 仕事量が想像以上に多い
理事長になって最初に驚くのは、仕事の多さです。
例えば、次のような業務があります。
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理事会の開催準備
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議題の整理
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管理会社との打ち合わせ
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総会資料の確認
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住民からの苦情対応
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工事の検討
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管理費滞納の対応
マンションの規模にもよりますが、これらをすべて把握するだけでも大きな負担になります。
しかも、ほとんどの場合、理事長は本業の仕事を持っています。
仕事が終わった後や休日に、管理組合の仕事を行うことになるため、時間的な負担はかなり大きくなります。
「ボランティアなのに仕事が多すぎる」
そう感じる理事長は少なくありません。
理由② 住民からの苦情が集中する
理事長が疲弊する大きな原因のひとつが、住民からの苦情です。
マンションでは、日常的にさまざまな問題が発生します。
例えば
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騒音問題
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ペット問題
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ゴミ出しルール違反
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駐車場トラブル
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共用部分の使い方
こうした問題が起きると、多くの場合、住民は理事長に相談します。
しかし、問題によっては簡単に解決できないものも多くあります。
当事者同士の感情が絡む場合、理事会が間に入っても解決が難しいこともあります。
それでも、住民からは
「理事会は何をしているのか」
「理事長は対応してくれない」
といった不満が出ることもあります。
このような状況が続くと、精神的な負担が大きくなります。
理由③ 理事会がチームになっていない
理事長が疲れるマンションの多くは、理事会がチームとして機能していません。
本来、理事会は複数の役員で運営する組織です。
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理事長
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副理事長
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理事
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監事
それぞれが役割を分担し、協力してマンションを運営するのが理想です。
しかし実際には「理事長が全部やっている」というマンションも少なくありません。
例えば、
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理事長だけが管理会社と連絡
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理事長だけが資料を読む
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理事長だけが住民対応
という状態になると、当然ながら負担は集中します。
このような理事会では、理事長が疲弊するのは時間の問題です。
理由④ 前例が分からない
マンション管理は専門性の高い分野です。
例えば
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長期修繕計画
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大規模修繕工事
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管理規約
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区分所有法
など、多くの知識が必要になります。
しかし、理事長になったばかりの人は、ほとんどの場合これらのことをを知りません。
前任の理事長から十分な引き継ぎがない場合こと「何をどう判断すればよいのか分からない」という状態になります。
その結果、
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判断に時間がかかる
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不安が大きくなる
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精神的な負担が増える
という悪循環に陥ります。
理由⑤ 感謝されることが少ない
理事長の仕事は、基本的にボランティアです。
それにもかかわらず、住民から感謝されることは意外と少ないものです。
問題が起きたときには不満が出ますが、問題が起きていないときには理事会の努力は見えにくいからです。
そのため、「こんなに頑張っているのに理解されない」と感じてしまう理事長もいます。
この心理的な負担も、疲弊の原因の一つです。
理事長を疲弊させないために
では、理事長が疲れないマンションにするためには、どうすればよいのでしょうか。
ポイントは三つあります。
① 理事会で仕事を分担する
理事長一人に仕事を集中させないことです。
例えば
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副理事長が管理会社との窓口
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理事が住民対応
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理事が資料確認
など、役割を分担することで負担は大きく減ります。
② 管理会社をうまく活用する
管理会社はマンション管理の専門家です。
理事会だけで抱え込まず、積極的にサポートを受けることが重要です。
③ 専門家を活用する
難しい問題が出てきた場合は、マンション管理士などの専門家を活用することも有効です。
専門家が入ることで
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判断の負担
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調整の負担
を減らすことができます。
まとめ
マンションの理事長が1年で疲弊してしまうのは、決して珍しいことではありません。
主な理由は次の通りです。
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仕事量が多い
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住民からの苦情対応
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理事会がチームになっていない
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専門知識が必要
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感謝されにくい
しかし、本来マンション管理は「理事長一人で行うもの」ではありません。
理事会がチームとして機能し、管理会社や専門家をうまく活用することで、理事長の負担は大きく減らすことができます。
マンション管理は長く続くものです。
理事長が疲れ切ってしまう仕組みでは、良い管理は続きません。
理事長だけに負担を集中させない仕組みを作ること。
それが、健全なマンション管理の第一歩と言えるでしょう。