マンションの購入を考えている人、マンションに住み始めて何年かたち役員が輪番制の管理組合で順番が回ってきた人など、マンションに住むなら避けて通れない管理組合のことを知っておきましょう。
- 管理組合の定義
- 管理組合の努力義務
- 管理組合の業務(単棟型)
- 1.管理組合が管理する敷地及び共用部分等(組合管理部分)の保安、保全等
- 2.組合管理部分の修繕
- 3.長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
- 4.建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
- 5.マンション管理適正化法103条1項に定める、宅建業者から交付を受けた設計図書の管理
- 6.修繕等の履歴情報の整理及び管理等
- 7.共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
- 8.区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認めれれる管理行為
- 9.敷地及び共用部分等の変更及び運営
- 10.修繕積立金の運用
- 11.官公署、町内会等の渉外業務
- 12.マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
- 13.広報及び連絡業務
- 14.管理組合の消滅時における残余財産の清算
- 15.その他建物並びにその敷地及び付属施設の管理に関する業務
管理組合の定義
マンションの区分所有者は、区分所有法3条の規定によって、当然に建物等の管理を行うための団体を構成するものとされています。そしてこの団体のことを管理組合といいます。
管理組合は法律上定義された用語ではありませんでしたが、マンション管理適正化法で、管理組合は、「マンションの管理を行う区分所有法3条若しくは65条に規定する団体又は区分所有法47条1項(区分所有法66条において準用する場合を含む。)に規定する法人」と定義されました。
区分所有法3条の団体とは、「管理組合」。区分所有法65条に規定する団体とは、「団地管理組合」。区分所有法47条1項に規定する法人とは、「管理組合法人」。区分所有法66条において準用する場合とは、団地管理組合が法人化された「団地管理組合法人」のことです。
区分所有法は昭和37年に施行され、昭和58年の改正により「区分所有者は、全員で、建物及び付属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」(区分所有法3条前段)との規定が新設されました。
区分所有者は「団体を構成できる」のではなく、「団体を構成する」のです。区分所有者は強制的に管理組合に加入させられる、ということでもありません。管理組合は区分所有者全員で構成する団体で、区分所有法上当然に存在する団体です。
管理組合の努力義務
管理組合は、マンションを適正に管理するよう自ら努めるとともに、国及び地方公共団体が講ずるマンションの管理の適正化の推進に関する施策に協力するように努めなければならない(マンション管理適正化法5条1項)。
また、マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすように努めなければならない(同条2項)。と、定められています。
管理組合の業務(単棟型)
標準管理規約単棟型で規定されている管理組合の業務とその内容(標準管理規約単棟型32条)は、15項目あります。
1.管理組合が管理する敷地及び共用部分等(組合管理部分)の保安、保全等
管理組合室や集会室の保全、エレベーター、電気設備、給・排水設備等の諸設備の保守点検、エントランス、廊下、階段等の日常・定期清掃、汚水槽や害虫発生場所の消毒、ゴミ処理などがあります。
2.組合管理部分の修繕
修繕には共用部分の割れたガラスの交換、切れた蛍光灯の交換など日常の経常的修繕、外壁補修、屋上防水、ポンプ機器類の整備、交換など一定年数経過ごとに行う計画的修繕、不測の事故による修繕などがあります。
3.長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
建物を長期にわたって良好に維持・管理するためには、一定の年数の経過ごとに計画的な修繕を適切にしなくてはなりません。長期修繕計画を作成し適切に管理等を行い、その計画の定期的な見直しをすることが大事です。
長期修繕計画の内容には次のようなものがあります。
a.計画期間
計画期間が30年以上、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とすること。
b.対象となる工事、修繕周期及び工事金額等
計画修繕の対象となる工事として外壁補修、屋上防水、給排水管取替え、窓及び玄関扉等の開口部の改良等が揚げられ、各部位ごとに修繕周期、工事金額等が定められているものであること。
c.全体の工事金額と劣化診断費用
全体の工事金額が定められたものであること。また、長期修繕計画の作成又は変更及び修繕工事実施の前提として、劣化診断を併せて行う必要があります(コメント32条関係③)。
そして、長期修繕計画の作成又は変更に要する経費及び長期修繕計画の作成のための劣化診断に要する経費の充当については、管理組合の財産状態等に応じて「管理費」又は「修繕積立金」のどちらからでもできますが、修繕工事を前提としての劣化診断に要する経費の充当については、原則として「修繕積立金」から取り崩すこととなるとしています(コメント32条関係④)。
4.建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
マンションを建て替えようとする場合、修理した場合と建て替えをした場合との費用などの比較や、それぞれのメリット、デメリットなど、さまざまな事を調査をして、区分所有者の合意形成に必要な資料を作成しなければなりません。
5.マンション管理適正化法103条1項に定める、宅建業者から交付を受けた設計図書の管理
管理組合が管理する設計図書はマンション管理適正化法103条1項に基づいて宅建業者から交付される竣工時の下記のものがあります。
付近見取図
配置図
仕様書(仕上表を含む)
各階平面図
2面以上の立面図
断面図又は矩計図
基礎伏図
各階床伏図
小屋伏図
構造詳細図又は構造計算書
以上です。しかしながら、32条はマンション管理適正化法の施行(平成13年8月1日)前に建設工業が完了した建物の分譲には適用されないこととされているので、これに該当するマンションは上記の図書が交付されていないことがあります。
また、建物の修繕に有用な書類として、
上記以外の設計関係書類(数量調書、竣工地積測量図等)
特定行政庁関係書類(建築確認通知書、日影協定書等)
消防関係書類
給排水設備図
電気設備図
機械関係設備施設の関係書類
売買契約書関係書類
等があるので、各マンションの実態に応じて、具体的な図書を規約に記載することが望ましいとしています(コメント32条関係⑤)。
6.修繕等の履歴情報の整理及び管理等
修繕等の履歴情報には下記のようなものがあります。
大規模修繕工事、計画修繕工事及び設備改修工事等の修繕の時期、箇所、費用及び工事施工者等
設備の保守点検、建築基準法12条1項及び3項の美特定建築物等の定期調査報告及び建築設備(昇降機を含む。)の定期検査報告
消防法8条2の2の防火対象物定期点検報告等の法定点検
耐震診断結果
石綿使用調査結果等
維持管理の情報であり、整理して後に参照できるよう管理しておくことが今後の修繕等を適切に実施するためにも有効な情報です(コメント32条関係⑥)。
7.共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
共用部分などに火災保険などを付保する場合の保険契約の締結や保険金額の請求、受領などに関する業務です。
8.区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認めれれる管理行為
区分所有者が管理する専用使用部分(バルコニー、専用庭、玄関扉、窓枠、窓ガラスなど)の管理の中で、計画修繕(バルコニーの防水など)は、管理組合の業務として規定しました。
9.敷地及び共用部分等の変更及び運営
「変更」には「その形状又は効用の著しい変更を伴うもの」(区分所有法17条1項)と「その形状又は効用の著しい変更が伴わないもの」(区分所有法17条1項)とがあります。
「その形状又は効用の著しい変更が伴うもの」は区分所有法上の特別決議を要し、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」は普通決議で決します。
「形状の著しい変更」
10.修繕積立金の運用
修繕積立金の運用は、定期預貯金、住宅金融支援機構のマンション修繕積立債権の購入や積立マンション保険などがあります。当然、元本の安全性が保障されて、有利に運用できるものを選びます。
11.官公署、町内会等の渉外業務
消防署、警察署、清掃事業所等の官公署や分譲会社、施工業者、町内会等との対外的折衡業務を行います。
12.マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
風紀、秩序及び安全の維持には義務違反者に対する措置の実施を含みます。防災には消防用設備等の点検、消防計画作成、消防訓練などがあります。
13.広報及び連絡業務
広報紙の発行、掲示や設備点検、定期清掃などの実施日時の通知などの連絡業務があります。
14.管理組合の消滅時における残余財産の清算
被災により建物が全壊したり、老朽化で建替えをして別の用途の建物になるなどして消滅管理組合は、管理費や修繕積立金等の残余財産を清算する必要があります。
15.その他建物並びにその敷地及び付属施設の管理に関する業務
その他マンション管理に必要な業務は、管理組合の業務になります。標準管理規約の各条で管理組合、理事会、役員等の業務とされているものは、標準管理規約32条の管理組合の業務となります。
例えば、専有部分の修繕等の申請の受理、会計担当理事の行う会計業務、収支予算案や収支決算案、事業計画案の作成などの業務があります。
以上が管理組合の大まかな業務ですが、これだけのことを管理組合の理事会だけで行うことは現実的ではありません。自主管理をしている管理組合もありますが、ほとんどの管理組合は管理会社に管理業務の委託をしています。
管理業務を管理会社に委託したからといって、全て管理会社任せにしてはいけません。マンション管理の主体はあくまで管理組合です。2ヶ月に一度、できれば毎月理事会を開催して当月の会計報告や業務報告を受けましょう。